ガーネットとはザクロ石とも呼ばれる宝石の一種です.ザクロの色によく似ているからこの名がついたといわれています.
宝石だと言われれば,そう簡単には手に入れられないと思うかもしれませんが,ある場所に行けば下の写真のようなガーネットが簡単に手に入ります.このガーネットの特徴は,色が透き通ったザクロ色というところにありますが,形がきれいな球形(実際には12面体~24面体)になっているというところにもあります.
採集したガーネット
「写真のような大きな宝石がとれるの?」と思われるかもしれませんが,実は写真を引き伸ばしているのでこんなに見えていますが,実際の大きさは直径1㎜くらいです.だましてすみません.
では,このようなガーネットがどこで採集できるかというと,景勝地で有名な「どんづる峯」(奈良県香芝市穴虫地内)のすぐ近くを流れる県道703号線沿いの川で採集できます.
ガーネットの採集場所
上の地図に記してある「採集場所」辺りに橋が架かっており,そこから河床まで下りて川の砂を採集すればそこにはたくさんのガーネットが含まれているのです.
ガーネットを採集しているようす
それではどうしてこの川の砂の中にガーネットが含まれているのでしょうか?
もう一度上の地図をご覧ください.地図の中に「ガーネットを含む安山岩の露頭」と矢印で示してあるのですが,その辺りの安山岩に下の写真のようにガーネットが含まれています.
安山岩の中のガーネット(白い矢印の先)
その安山岩が風化によってバラバラに砕かれることで,硬い鉱物であるガーネットがほとんどそのままの形で残されたということです.
では,どうしてガーネットがこの安山岩の中に含まれているのでしょうか?
マグマは様々な物質の混合物です.この安山岩をつくったマグマには特別にガーネットが溶け込んでいたと考えられます.
また,一般的に鉱物は結晶をつくるものが多く,その結晶は固有の形(これを自形といいます)をもちます.しかし,安山岩のような火山岩の中で自形の結晶になるには条件があります.それは,自分が結晶化する際に周囲が液体であるということです.言い換えれば,他の鉱物よりも先に結晶化するような鉱物,すなわちマグマに含まれている他の鉱物よりも融点が高い鉱物でなければならないと考えればよいでしょう.そのため,マグマが少し冷却された際にいち早く自形の結晶をつくることができるのです.その後,火山の噴出とともに周囲のマグマは急激に固結し,ほとんどが石基となったのです.
まとめると,この場所で安山岩を形成したマグマにはガーネットが溶け込んでおり,そのガーネットは融点が高い鉱物であったために,マグマが少し冷却した際にいち早く自形の結晶を作っていたと考えられるのです.
この考え方は火山岩における斑晶のでき方と同じです.斑晶になるような鉱物は融点が高い鉱物で,マグマが噴出する前にマグマだまり等で冷却される際に結晶化している鉱物だと考えればよいでしょう.
中学生に火山岩のでき方を教えている際に,斑晶と石基ができる理由をどのように説明しているでしょうか?上記の意味が理解できていれば,斑晶のない火山岩や斑晶の非常に大きな火山岩などの多様な火山岩のでき方も中学生に推測させることができるでしょう.
注意! マグマの中で起こる鉱物の結晶化は非常に複雑で,上記の説明はその点では正確でない部分があります.ただし,中学生等への説明に際しては問題はないでしょう.
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