赤玉土の火山灰観察(2)

一般的に火山灰には,鉱物,岩片,火山ガラス,軽石などが含まれています.今回の場合は,赤玉土中の鉱物観察がねらいなので,赤玉土の火山灰観察(1)の最後に行った椀掛け法で採取した粒子から,鉱物のみを選び出さなければなりません.これが第一のハードルですが,ほとんど心配はいりません.

赤玉土の火山灰中に見つかる鉱物は,基本的に透明,あるいは半透明ですので,それ以外のものを除けばよいのです.また,結晶質の鉱物であれば,光を当ててやると結晶面が光って見えます.風化等によって形状が崩れてわかりにくいものも含まれていますが,それらは無理に分類する必要がないと私は考えています.その理由は,私がいろいろな鉱物の専門家に聞いてみても,「わからない」という答えが結構返ってくるからです.

言い換えれば,このような観察を学校で行う場合には,すべての粒子を分類させるのではなく,「この火山灰の中から造岩鉱物を見つけよう!」というテーマ設定にして,特徴的な粒子を探す活動にする方がよいと考えます.私は大学でこのような方法で花粉化石の観察を行ってきましたが,宝探しの様にして学生たちは真剣に探しています.

このような方法であれば,どちらかわからないような粒子を見つけて生徒が質問をしてきても,「これは分類が難しいね!」と生徒に安心して言えるでしょう.理科教員全員が鉱物の専門家でなくてもよいのです.

下の写真で確認してみてください.どれが有色鉱物でどれが無色鉱物かくらいは案外簡単に分類できます.気をつけたいのは半透明な無色鉱物である長石類です.わからなければ「これは難しい!」でよいと思います.

矢印で示した粒子以外はほとんど岩片(火山噴火に伴って一緒に噴出した岩石のかけら)

次は,観察法です.椀掛け法で採取した赤玉土中の火山灰を実体顕微鏡やルーペで観察してももちろんよいと思いますが,私は生徒自身に写真を撮らせたいと考えていますので,下の写真のようなデジタル顕微鏡を使って観察させます.デジタル顕微鏡といっても拡大鏡だと思えばよいでしょうが,これをUSBあるいはWifiでタブレットPCと接続すれば簡単に写真が撮れるのです.撮った写真をPC上のノートに貼り付け,矢印などをつけて鉱物名を書き込めば,観察記録が簡単にできます.

火山灰の観察器具

私は,透明な観察台(自作)や底敷き(白色と黒色の板),横から光を当てる簡易ライト(100円ショップ)を使いますが,このデジタル顕微鏡(Amazonで購入3000円程度)を火山灰の上からかぶせるだけで十分です.

それではここから鉱物の分類についてです.これが2つめのハードルでしょう.ここでは赤玉土中の火山灰に絞ってそこから産出する鉱物だけを分類する私がつくった検索表を使いましょう.

赤玉土の鉱物検索表

分類の第一歩は,鉱物か鉱物以外かの分類です.これは先ほども言いましたが透明や半透明あるいは光を当てると反射する面をもっているかどうかなどが基準です.

次は鉱物の形状です.まず,粒状か柱状に分けましょう.粒状の鉱物には,石英,長石類,磁鉄鉱などがあります.その分類は,石英は無色透明,長石類は白色の半透明,磁鉄鉱は真っ黒です.まれにカンラン石も含まれるようですが,私は見つけたことはありませんので省きます.

柱状のものには角閃石と輝石がみつかります.輝石は2種類あり,ビールビンの色のようなシソ輝石とソーダ水のような色の普通輝石です.角閃石の色は黒~濃い緑色ですので,普通輝石の色と判別が少し難しいでしょう.

そこで,この角閃石と輝石を明確に分類する基準として2つの鉱物の結晶形の違いに着目しました.

角閃石と輝石類の結晶形の違い

この写真を見てもらうとわかるように角閃石の断面は細長いひし形で,長石類の断面は細長い8角形です.それぞれの鉱物を単体で紙の上に置くと,上面が図の黄色の位置になります.この状態で真上から黄色の面を見ると,角閃石では中央付近に赤い線(隣の面との境目にできる角)が見えますが,輝石類の場合は,赤い線が中央付近にはなく,中央から等距離に2本見えることになります.ただし,観察する時は,火山灰を重なっていないように薄く広げることが大切になってきます.

角閃石と輝石類の分類は少し難しいかもしれませんが,「これは分類が難しいね!」という精神でやってみてください.

必要であれば,検索表等をお送りしますので,コメントを残してくださればと思います.








コメント