2019年の4月のことですが,私は大阪市立科学館で展示されていた長良隕石(2号)を見学してきました.この隕石は2012年に岐阜県岐阜市長良で発見されたようです.
長良隕石(2号)
この長良隕石を見てまず驚いたのは,その断面がピカピカに光っていることです.上の写真でも私の指が隕石の断面に写っているのがわかると思います.まさしくピカピカに磨かれた鏡のようになっていました.
もう一つの特徴は,この隕石の密度の大きさです.この密度の大きさを体感できるように,この隕石の隣には持ち上げることができる別の隕石も展示してありました.それを持ち上げようとした小学生が「まじ,重っ!」とつぶやいていたのは印象的でした.どうしてそんなに重く感じたのでしょうか?
それは普段持ちなれた石と比較してそう感じたからに違いありません.普段持ちなれた石は火成岩であれば密度が3.0g/㎤くらいでしょうが,この長良隕石の密度はおそらく7.0~8.0g/㎤程度はあると考えられます.
この2つの特徴は何を意味しているのでしょうか?
それはこの長良隕石が鉄とニッケルの合金でできているということです.このような隕石を一般的には鉄隕石と呼んでいます.
では,このような金属の塊がどのようにして地球にやってきたのでしょうか?
実は私たちの身近にもこの隕石と同じような鉄とニッケルの巨大な塊があるのをご存知でしょうか.それは地球の内部にある核です.
地球の内部構造は大きく分けると中心から核,マントル,地殻の3層構造になっています.
地球の内部構造(3層の比率は適当です)
この3層構造の中で,核は鉄とニッケルの合金からできていると考えられています.ではどうして地球の核は鉄やニッケルといった金属からできているのでしょうか.
そのことを理解するには,太陽系の歴史をさかのぼる必要があります.
約46億年前に宇宙空間に漂うガスと固体の微粒子(星間物質)の濃密な部分がさらに収縮し,その中心に太陽ができました.
その後,太陽の周囲をぐるぐると回っていた微粒子等が衝突しながらだんだん大きく成長し,微惑星が誕生します.
(国立科学博物館HPより)
そして,その微惑星も衝突しながら,原始惑星,そして原始惑星へと成長していきます.
このように宇宙空間で衝突が繰り返された時期は,その衝突の巨大なエネルギーによって天体自体がマグマのようにドロドロに溶けていたと考えられています.これをマグマオーシャンと呼びます.
この時,マグマオーシャンとなった天体は,その天体を構成する元素の中で密度の大きいものが中心に沈み込み,密度の小さいものが地表近くにとり残されたと考えられています.
地球も同様にできたために,密度の大きいものから順に核,マントル,地殻の3層構造になっているのです.
初期と現在の地球の内部構造
では,なぜ地球の中心に沈んでいった物質が鉄やニッケルであったのかという問題ですが,約46億年前にあった星間物質の中に,密度が大きい物質として鉄やニッケルが含まれていたということです.この鉄やニッケルの起源は別の恒星が超新星爆発を起こした際にばらまいたものだと考えられています.
整理してみると,長良隕石のような鉄隕石は,太陽系ができる過程で,いったんマグマオーシャンの状態になった天体の核の部分だと考えられます.その天体が他の天体と衝突することで粉々になって宇宙空間にばらまかれていたものです.そしてそれがたまたま地球の引力に引かれて落ちてきたと考えればよいでしょう.
しかし,地球の核が実際に鉄とニッケルの合金からできているのを実際に見た人はいません.地球の核が鉄とニッケルの合金でできていると推測されているのは,おどろくことに宇宙から落ちてくる鉄隕石から推測しているに過ぎないのです.
ちなみに,隕石の種類には鉄隕石のほかに,石質隕石,石鉄隕石があります.
石鉄隕石は,石(ケイ酸塩鉱物)と鉄(鉄とニッケル)からなり,マントル部分の破片だと考えられますし,石質隕石は石(ケイ酸塩鉱物)からなり,主には地殻部分の破片だと考えればよいでしょう.
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