みなさんは生徒に化石の採集やクリーニングをさせたことがありますか?
「そう言われてもなかなか化石の採集に適した場所はないし,化石が産出する場所が身近にあったとしてもそんなに簡単には化石は採集できない!」と思われている方は多いことでしょう.私もその通りだと思いますし,そのために化石を使った理科授業は私も避けてきました.
でも,もし,化石採集が体験できる岩石が手軽に手に入るのであれば使ってみたいと思いませんか?
そんな願いをかなえてくれるのが「塩原木の葉石」です.
「塩原木の葉石」から産出したカメムシのなかまの化石
さて,「塩原木の葉石」とはどんな化石でしょうか.「木の葉化石園」のHPによると,『「木の葉石」は今から数十万年前,第四紀更新世中期に現在の塩原温泉街付近にあった古塩原湖に堆積した地層の中に含まれる化石を指します』とあります.
この古塩原湖ができる過程を「塩原木の葉石ガイドブック」から簡略化してまとめると,
①約50万年前に盛んに活動していた火山に,②初期のカルデラ湖が形成され,③約30万年前の噴火でそのカルデラ湖の南側が埋められたことで三日月形のカルデラ湖が形成され,古塩原湖が形成された.④そしてこの古塩原湖が干上がって現在の塩原盆地が形成された. とあります.(現在の塩原温泉(栃木県那須塩原市)はこの塩原盆地にあります.)
この辺りの解説は,「塩原木の葉石ガイドブック」に詳しいので参考にしてください.
相場博明『塩原木の葉石ガイドブック』丸善出版
この古塩原湖の堆積物である「塩原木の葉石」を教育関係者に安く販売してくれているのが「木の葉化石園」です.
私も大学の授業用に,毎年この「木の葉化石園」から化石の原石を購入し,学生たちに化石のクリーニングを経験させています.教育施設向けの化石の原石の値段は一袋で650円(税込)です.(送料は別途必要)
木の葉化石園から送られてくる化石の原石1袋
この袋の中には5個の化石の原石が入っていました
ただし,1個の化石原石に必ず化石が入っているとは限りませんので,注意してください.私の経験からすれば,2個くらい丁寧に原石をクリーニングすれば,1個の化石にはほぼ出会えるくらいの感覚です.
学校の授業等で全員に使わせるのは難しいかもしれませんが,科学部などであれば可能かもしれませんね.
さて,この「塩原木の葉石」を使って化石採集を行う際に最も重要であることは,「塩原木の葉石」が湖の堆積物だと認識させておくことです.これを理解させておくことで,どうして木の葉の化石がこの堆積物に含まれているのかや,この堆積物のどこに木の葉の化石が挟まれているのかがわかります.
木の葉は水の流れの緩やかな湖底にゆっくりと沈んでいき,湖底に覆いかぶさるように堆積するはずです.このことを理解しておくと,この化石原石にある当時の湖底面に対して平行に木の葉の化石が含まれていることが理解できるはずです.この当時の湖底に対して平行に化石の原石を割っていけば,いつかは木の葉の化石に出合えるのです.
闇雲に堆積物をバンバンたたくようでは,バラバラになった化石の断片にしか出くわさないことになってしまいます.
それでは当時の湖底をどのように見つければよいのでしょうか?
それは層理面を見つければ,それが当時の湖底だということになります.
「塩原木の葉石」を横から見たところ
この層理面(=当時の湖底)に木の葉が堆積していることがわかっていると,この層理面に沿ってこの化石原石を割ってやれば効率よく木の葉の化石に出合えるのです.
しかし,どの層理面に木の葉が堆積しているかはやってみないとわかりません.
ただし,層理面に木の葉が挟まれていると,そこが割れやすくなっています.よく観察するとどこに木の葉の化石が眠っているかがだんだんわかるようになるでしょう.
化石採集に必要な道具
また,化石採集に必要な特別な道具がいるのではないかと心配している方もいるかもしれませんが,必要な道具は上の写真のようなものくらいです.ほぼ100円ショップで揃うものばかりです.
採集をする時の基本は,マイナスドライバーの広がっている方の先を,できるだけ層理面に平行になるようにして上からハンマーでたたけばよいのです.うまくいけば,層理面に沿って簡単にうまく剥がれます.初めてやる際には失敗はつきものですから,やってみて学ぶことも重要です.コツをつかめばドンドンうまくなっていくでしょう.
以下に,大学生が1時間くらいの実習で採集した化石の写真を載せておきます.この程度であれば簡単にゲットできます.また,一番最初の写真はおそらくカメムシのなかまの化石です.よく観察すると,木の葉以外に昆虫類も結構混ざっています.
これらの植物種の同定法は前述の「塩原木の葉石ガイドブック」に詳しく説明されています.この本の中に頻出する木の葉の化石の検索表もありますので,生徒たちに挑戦させてみてはいかがでしょうか.
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